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事務局長が赤穂高校で講演を行いました [2010.06.24]
6月24日に、長野県金融広報委員会の佐藤俊彦事務局長が、今年度の金融教育研究校に委嘱している長野県赤穂高等学校(駒ケ根市)で、金融講話を行いました。
この金融講話は昨年に続き実施したもので、今回は、商業科3年生のうち「国際ビジネス」の選択者24名を対象に「日本経済の真実」と題して、また、商業科1年生74名を対象に「私たちの暮らしと日本銀行」と題して、それぞれ講演しました。
このうち、「日本経済の真実」と題しての金融講話の内容は以下のとおりです。
「日本経済の真実」
2008年の日本の名目GDPは4.4兆ドルと、米国に次いで世界第2位の経済大国でしたが、今年は中国に抜かれて3位となる見込みです。
「GDP」とは、Gross Domestic Productの頭文字で、日本語では「国内総生産」と言います。それぞれの国が国内で1年間に新しく作ったモノやサービスの合計額で、この「新しく作ったモノやサービス」のことを「付加価値」と言います。そういう意味で、GDPは国の経済の大きさを測る指標と言えます。
生産したものは、国民に分配され(収入)、国民はそれを支出します(消費・投資)。したがって、「生産」と「分配」と「支出」は等しくなります。経済学では、これを「三面等価の原則」と言います。つまり、私たちがより多くの消費や投資(住宅購入など)を行うためには、GDPが大きくなっていく必要があるということです。
最初に名目GDPということを言いましたが、経済では、「名目」に対して「実質」という言葉があります。例えば、給料が1割増えたとしても、物価が1割上がっていたらどうでしょうか?給料で買えるものは以前と比べて変わりません。給料が1割増えたのは「名目」でとういうことですが、物価の影響を考慮すると、本当は変わっていないのです。この「物価の影響を考慮する」というのが「実質」なのです。経済の本当の姿をみるには、「実質」というのが重要になります。
さて、このGDPを増やす(経済を成長させる)にはどうすればよいのでしょうか?経済学では、「労働力」、「資本(生産設備)」、「生産性(技術力)」の3つを「生産の3要素」と言っています。労働者の数を増やせば生産は増えますし、手作業で行うよりも機械を使えば生産は増えます。また、新しい技術開発により能力が向上した機械を使えば生産は増えます。そういう風に考えれば、分かり易いと思います。日本では、少子高齢化が進み、労働力は減少しています。したがって、経済を成長させるには、設備投資や技術開発を進めるしかありません。そのためには、お金が必要です。つまり、お金(貯蓄など)を如何に有効に使うかが重要になるということです。
家計の金融資産は、2009年6月末で1,441兆円です。そのうちの55%が預金で、株式は7%しかありません。米国では、42.4兆ドルの金融資産のうち、預金は15%しかなく、株式が31%もあります。これをどうみるか?いろいろな見方があると思いますが、日本の場合は、「間接金融」といって、金融機関を通じて個人のお金が企業や政府に流れていくということになっています(これに対して、米国のように株式や債券のかたちで直接企業に対して資金を提供していくことを「直接金融」と言います)。私たちが企業の目利きをしてどの企業に投資するのがよいかを判断するのはなかなか難しいかもしれません。そういう意味で、金融機関というプロの目でみて、私たちのお金(預金)を有効に使ってもらうというのも1つの方法かもしれません。しかし、注意しなければならないのは、私たちの預金は国債の購入にも使われているということです。国債を買っている人は少ないかもしれませんが、「間接金融」の仕組みを通じて、私たちはあまり意識せずに国債を買っているのです。私たちは政府の予算というものに関心を持ち、私たちのお金が有効に使われているかをチェックする必要があるのです。
2010年度の国の一般会計予算をみると、歳入面では、公債金が全体の48%を占め、税収を上回っています。歳出面では、国債費と地方交付税交付金等といった支出額が基本的に決まっているものが41%で、これらを除く、社会保障費等の一般歳出が58%です。つまり、国の政策に基づく予算執行の殆どは国債の発行によって賄われているといってもよいのです。その意味からも、私たちは、どういう政策に予算(私たちのお金)が使われているかを吟味しなければなりません。
普通国債の発行残高は2010年度末で637兆円程度で名目GDPの134%、国と地方の長期債務残高では、862兆円程度と、名目GDPの181%、約2倍ということになります。国の一般会計の歳出総額と税収の推移をグラフで示すと、歳出は増加を続ける一方、税収は、平成に入ってから、景気の伸び悩みにより、法人税や所得税を中心に減少傾向にあります。グラフをみると、ワニが口を開いたような形になっていることから、最近では、これを「ワニの口」とい言っているようですが、ワニの口を閉じさせるにはどうすればいいか?「事業仕分け」というのは歳出を抑える方策であった訳であり、また、現在争点となっている「消費税」は税収を増やす方策です。景気に左右されない税制体系というのを考える必要もあります。
私たちは、国債発行をこのまま増やし続けることはできません。それは、1つには、私たち家計の貯蓄が減少しているという事実があります。わが国の貯蓄率の推移をみると、かつては高い貯蓄率を誇っていました。1992年には貯蓄率は15%もありましたが、今では2%程度にまで急減し、あの消費大国の米国よりも低くなっているのです。いつまでも私たちのお金(貯蓄)をあてにすることはできなくなっているのです。もう1つには、「ギリシャ問題」をきっかけとした財政問題に対する世界の関心の高まりがあります。日本の財政赤字の名目GDP比は7%程度と、ギリシャの13%と比べればまだ低いですが、先進国の中でみると悪い方の部類ですし、政府債務残高の名目GDP比は、先ほどもお話したように2倍近い水準で、ギリシャ(約120%)よりも遥かに状況は悪く、先進国の中のだんとつのワースト1です。
ところで、話は若干逸れますが、このギリシャ問題で、ユーロ安が起こっています。一昨年秋のリーマン・ショック後は、ユーロも米ドルも安くなり、円高ドル安・ユーロ安となったのですが、今回のギリシャ問題ではユーロだけが安くなっています。ユーロ安となると、日本からユーロ諸国に対する輸出企業には不利になる訳ですが、日本からユーロ諸国に対する輸出は全体の14%ですので、その影響はさほど大きくはないと言えるでしょう。ただ、長野県についてみると、その比率は22%です。全国に比べると、長野県の企業への影響は大きいということになります。
さて、話を元に戻しますが、日本の国債はその殆どを日本人が買っているので、ギリシャなどと状況は異なるといった議論も聞かれます。しかし、日本人がこのまま国債を買い続けることができるかは、今お話したように、かなり疑問ですし、日本の経済力が落ちてきた場合、「日本は特別」ということが通じるか、予想できない面もあります。ひとたび、日本の財政運営に対して不信感が生じれば、一挙に状況は悪くなるということは、「ギリシャ問題」で実証済みです。国債を減らしていくことは喫緊の課題です。
読売テレビの解説委員長で、テレビでお馴染みの辛坊治郎氏が、「日本経済の真実」という本を最近出版されました。非常に面白い本で、一読をお薦めしますが、実は、そのタイトルからもお分かりのように、本日の私の講演のネタ本なのです。ところで、この本の副題は、「ある日、この国は破産します」となっています。本日、私がお話したことから、その意味はお分かりだと思いますが、評論家は「破産します」と言っておしまいでいいかもしれませんが、私たちはそれでは困ります。特に、将来ある皆様高校生にとっては一大事です。日本が破産しないようにするにはどうするか?そのために私たちはどうすればよいのか?私は3つのことを提言したいと思います。1つ目は、政治・経済に関心を持つこと、2つ目は、経済の仕組みを理解し判断の目を養うこと、3つ目は、行動することです。本日の講演がその取っ掛かりとなれば幸いです。 |
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